2002年度スタッフ研修会

財務省 造幣局 工場及び造幣博物館見学

2002年度新進部会スタッフ研修会を,平成14年3月14日(金)大阪市造幣局にて開催しました. (参加者8名.)造幣局は貨幣製造を主な業務とする財務省の特別の機関です.貨幣の製造は, 材料の溶解から,熱間圧延・冷間圧延,打ち抜き,圧印等の多くの塑性加工技術が利用されています. これらの加工技術は,貨幣の偽造を防ぐために他には真似できないような精巧な技術が組み込まれています. 優れた塑性加工技術を学ぶ上でよい題材と考え,研修会テーマとしてとりあげました.

1.講演

各ビデオによる概要紹介の後,貨幣製造ラインを見学しました.製造ラインは明治時代の創業時から 貨幣を製造していた工場に変わって3年前に製造が移管された新工場を見学しました。新工場は 生産ラインにも最先端の技術が用いられており,生産ラインはほぼオートメーション化されていました。 見学用の通路が設置され,所々にカメラのフォーカス機能により拡大表示可能なモニターが設置されて おり,製造の様子を細かに見学出来るようになっていました.その後,造幣博物館にて大判・小判など の古銭をはじめ,明治以降のわが国の貨幣・外国から寄せられた貨幣等を見学しました.貨幣の製造を 通じて現在のわが国の塑性加工技術のみでなく,過去の錬金術や塑性加工技術の歴史についても学ぶ ことができました.

質疑概要:
圧印の金型は常に偽造されないように研究金型は造幣局の研究機関にて製造されている. 新500円硬貨は韓国硬貨のウォンと材質が一緒であったことから材質を変更する対策が為され偽造は防止された. etc.

2.所感

工場の生産ラインは機械によりほぼ自動化されていたが,検査工程は人の手で行われていました. 現在も圧印の原型は手作業で行われているかどうかはわからなかったが、創業時には熟練技能者 の手で原型が製造されていたということであり,創業時から技術は世界にひけを取らない程で あったようでした.貨幣の他に勲章・褒章も製造しており、これらは熟練した職員の手で今でも 製造されていることから,おそらく貨幣の原型は手作業で製造されており熟練した技術と最先端の 装置技術が組み合わさることにより偽造不可能な精巧な貨幣が製造されていると思われます。 塑性加工技術者は全て自動化することに気をとらわれがちであるが他に真似されないような 非常に優れた製品を製造するためには手作業は不可欠なものとして見直していく必要があるかも しれないという印象を持ちました.